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 『オヴェリアとディリータ』
 ゼルテニア城。 ゴルターナ公の意思により女王の座に即位したオヴェリアは、偽りの生を生かされてきた事実に深く傷ついていた。
 悲嘆に暮れる女王にディリータは、利用されることのない人生と新しい王国を約束する。 次第にディリータに心を開き始めるオヴェリア…。



ゼルテニア城の教会跡


騎士ディリータ
「…こんなところにいたのか、
 皆が捜していたぞ。

騎士ディリータ
「なんだ、元気がないな。
「おっと、
 こんな口の利き方は失礼なのかな。
「女王陛下におわしましては
 御機嫌も麗しく存じ……
女王オヴェリア
「やめてッ!!

女王オヴェリア
「……お願い、やめて。

騎士ディリータ
「…悪かったよ。すまない。

女王オヴェリア
「…貴方たちは
 私をどうしようというの?
「私はオヴェリアじゃないのよ。
 貴方たちにとって
 何の価値もないはず。
「そう…、私には
 生きる価値なんてない……。

騎士ディリータ
「そうだな、たしかに
 おまえはオヴェリアじゃない。
「それどころか、
 本当の名前すらわからない。
 貴族なのか平民なのかも不明だ…。

女王オヴェリア
「…私の生きてきたこれまでの時間は
 いったい何だったの?
「王女の身代わりとして
 育てられ生きてきた……。
「ふふふ…、おかしなものね。
「王女なのに王都から離れた修道院で
 一生ひっそりと暮らさなければ
 ならないなんて…、
「どうして、私だけがそんな風に
 生きなければならないんだろうって、
 ずっと考えていた…。
「でも、私一人が我慢することで
 畏国の平和が続くなら
 それでもいいって思ったわ。
「あの悲しみ、あの寂しさ…、
 いったい何だったの?

騎士ディリータ
「おまえはオレと同じだ…。
「偽りの身分を与えられ生きてきた
 哀れな人間だ…。
「いつも誰かに利用され続ける。
「努力すれば報われる?
 そんなのウソだ。
「努力しないでも、
 それに近いヤツだけが
 報われるのが世の中の構造だ。
「多くの人間は与えられた役割を
 演ずるしかない…。
「…もっとも、大半の人間は
 演じていることすら
 気付いていないけどな。
「オレはそんなのまっぴらゴメンだ。
 オレは利用されない。
 利用する側にまわってやる!
「オレを利用してきたヤツらに
 それ相応の償いをさせてやる!

女王オヴェリア
「貴方は何をしようというの?

騎士ディリータ
「オレを信用しろ、オヴェリア。
「おまえに相応しい王国を
 用意してやる!
 オレがつくってやる!
「おまえの人生が
 光輝くものになるよう
 オレが導いてやろう!

騎士ディリータ
「だから…、そんな風に
 泣くのはよせ。

女王オヴェリア
「信じていいの……?
騎士ディリータ
「オレはおまえを裏切ったりはしない。
「死んだ妹…、
 ティータに誓おう…。
「だから、もう、泣くな…。