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 『獅子戦争勃発』
 ゴルターナ公の居城ゼルテニア城にオヴェリアを連れたディリータが姿を現した。公の重臣の一人を王女誘拐の首謀者に仕立て上げたディリータは、さらに南天騎士団を率いての王都ルザリア上洛を進言する。
 対するラーグ公も北天騎士団を動員。ここに畏国を二分する大乱“獅子戦争”が始まった…。



ゼルテニア城城内


ゴルターナ公
「貴公か…、オヴェリア王女を
 救出したというのは…。
騎士ディリータ
「グリムス男爵配下の黒羊騎士団、
 副官ハイラル。名をディリータ。
「グリムス男爵の密命により
 王女を救出するため身分を偽り出兵。
 任務を果たし、帰還いたしました。

グルワンヌ大臣
「…ハイラルだと?
 聞かぬ名だ。
ゴルターナ公
「男爵は先月、亮目団との戦いで戦死し
 黒羊騎士団も全滅したはず。
騎士ディリータ
「それ故、急ぎ帰還いたしました。
ゴルターナ公
「王女は?
司教カンバベリフ
「長旅の疲れのためか、
 死んだように眠っておいでです。

オルランドゥ伯
「…捕虜を連れてきたと聞いたが?

騎士ディリータ
「ハッ。
「捕虜を連れてこい!

騎士ディリータ
「何故、王女を誘拐した?
捕虜
「ゴルターナ公に嫌疑をかけることで
 王都ルザリアへの上洛を妨げ、
「摂政の位を与えぬためだ…。
騎士ディリータ
「誰がおまえに命じた?
 ラーグ公か?
捕虜
「…ラーグ公に取り入ろうとする
 ゴルターナ公の側近の一人だ。

グルワンヌ大臣
「バカな! そのような不忠者が
 おるはずもない!
「ええい、
 その痴れ者の口を閉じさせよ!

ゴルターナ公
「かまわぬ、聞け。

騎士ディリータ
「…それは誰だ?

捕虜
「…………。
騎士ディリータ
「言えッ、言うんだッ!
捕虜
「オレの命は助けてくれるんだろうな?
騎士ディリータ
「約束しよう。
 言えッ、誰だッ!!

捕虜
「…そこにいるグルワンヌ大臣だ。

グルワンヌ大臣
「なんだと! ウソを申すな!
 わしはおまえなど知らぬ!!

騎士ディリータ
「誰にそそのかされた? 王妃か?
グルワンヌ大臣
「ばかなッ、わしには関係ないッ!
騎士ディリータ
「主君を裏切った罪は重いぞ、大臣殿!

グルワンヌ大臣
「知らぬッ! わしは知らぬッ!!

騎士ディリータ
「僭越ながら申し上げます!
「今すぐ南天騎士団を率いて
 上洛されるべし!
「さもなくば、大臣の謀り事の責任を
 公爵閣下にとらせようと
 言い出す輩が出て参りましょう。
「その前に、速やかに
 オリナス王子と王妃を排斥し、
 オヴェリア様を御位に!!




王都ルザリアへの上洛を果たした
ゴルターナ公は、
王妃ルーヴェリアを王女誘拐の
首謀者としてベスラへ幽閉し、
オヴェリアを即位させた…。

しかし、ラーグ公は
オリナスこそが
正統の王位継承者であるとして
即位させると同時に
自分は後見人として摂政の座についた。

すぐにラーグ公は王妃救出のために
オリナスを総大将とした北天騎士団を
ベスラへ派遣した。
一方、ゴルターナ公も
オヴェリアを総大将とした
南天騎士団を派遣…。

後世“獅子戦争”と呼ばれる
大乱の始まりである…