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 『ガリオンヌの領主』
 イグーロス城で待っていたのは侯爵救出の労をねぎらう温かな言葉ではなく、命令違反を責めるダイスダーグの冷たい叱咤であった。「ベオルブの名を汚すな」と怒るダイスダーグ。そこへガリオンヌの領主にして現王妃の実兄、ラーグ公が現れた…。


ダイスダーグ卿
「…いったい、どういうことだ?
 なぜ、ゼクラス砂漠へ行ったのだ?

剣士ラムザ
「…………。

ダイスダーグ卿
「黙っていたのではわからん。
 説明しろと言っている…。
剣士ディリータ
「自分がラムザを
 無理矢理、誘いました。
ダイスダーグ卿
「そうなのか、ラムザ?
 ディリータのせいなのか?

剣士ラムザ
「…いえ、自分の意志です。
 ディリータのせいじゃありません。

剣士ディリータ
「いいえ、ラムザはウソを
 言っています。悪いのは…

剣士ラムザ
「僕をかばわなくていい。
 命令違反をしたのは僕の意思だ!

ダイスダーグ卿
「…皆が勝手気ままに振る舞うとしたら
 何のために“法”が存在するのだ?
「我々ベオルブ家の人間は
 “法”を順守する尊さを
 騎士の規範として示さねばならぬ。
「ベオルブの名を汚すつもりかッ?
剣士ラムザ
「……すみません、兄さん。

男の声
「もう、よいではないか、
 ダイスダーグ。

身なりのよい男
「侯爵を救出した功績は大きい。
 そう目くじらを立てなくともよい。
「功をあせる若い戦士たちの気持ちも
 わかるというもの。
 かつては、我らもそうであった。

ダイスダーグ卿
「…甘やかされては他の者たちに対して
 けじめがつきませぬぞ、ラーグ閣下。

ラーグ公
「そなたがダイスダーグの弟か。
 …楽にしてよいぞ。
「なるほど、亡きバルバネス将軍に
 そっくりだな…。
 よい、面構えだ。
「そのありあまる若さと力は
 城の警護だけで補えるものでも
 あるまい……。

ダイスダーグ卿
「…骸旅団せん滅作戦も大詰めだ。
 おまえたちの参加を許そう。
「いくつかの盗賊どものアジトを
 一斉に襲撃する。
 そのひとつをおまえたちに任そう。
剣士ラムザ
「…はい。

ダイスダーグ卿
「申し訳ありませぬ。
ラーグ公
「気にするな、ダイスダーグ。
「所詮、ギュスタヴも
 その程度の男だったということだ。
「侯爵誘拐がガリオンヌ領で
 行われた時点で、計画変更は
 避けようがなかったのだ…。
「それに侯爵の命を助けたのは事実。
 こちらの要求に対して侯爵側も
 妥協しないわけにはいくまい。
「結果として、貴公の弟君の行動は
 我々を有利な立場にしてくれた…。
ダイスダーグ卿
「国王の命もあとわずか…。
 事を急がねば…。
ラーグ公
「ああ、期待しているとも。
 我が友よ…。