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 『バリンテン大公の野望』
 リオファネス城執務室に神殿騎士団を迎えたバリンテン大公は取引を持ちかける。 神殿騎士イズルードから強奪した聖石『タウロス』と『スコーピオ』、そして『ゲルモニーク聖典』の所在を武器に、教会の後ろ盾を得ようというのだ。
 だが、ヴォルマルフは大公の申し出を断ると、その無礼な言いぐさに怒りをあらわにする…。


バリンテン大公
「ようこそ参られた。
 我が城はいかかですかな?
「ルザリア城と比べると
 いささか無骨な造りとなっていますが
 私は気に入っている…。
「統治のために建設された平城とは違い
 戦争のために造られたこの城の方が
 よほど美しい…。
「イヴァリースは常に
 “力”を持つ者によって
 統治されてきました。
「このたびの戦乱はひとえに
 王家がその“力”を失ったことの
 証でしょう。

神殿騎士ヴォルマルフ
「…用件を伺いましょう。

バリンテン大公
「…せっかちですな。

バリンテン大公
「単刀直入に申しましょう…、
 手を結びませんか?

神殿騎士ヴォルマルフ
「…どういう意味ですかな?

バリンテン大公
「今、申したとおり、イヴァリースを
 支配する者は“力”を持つ者です。
「では、今、“力”を持つ者とは
 誰なのか?
 北天騎士団を持つラーグ公?
「それとも南天騎士団を持つ
 ゴルターナ公ですか?
「いや、それは、
 ゾディアックストーンを持つ
 あなたたち神殿騎士団です…。
神殿騎士ヴォルマルフ
「!!

バリンテン大公
「聖石は、それ一つで大いなる魔力を
 備えていると聞きます。
「いにしえの伝説によると、
 かつてミュロンドを襲った天変地異も
 聖石によるものとか…。
神殿騎士ヴォルマルフ
「ハハハハハ…。
 …いや、失礼。
「それにしても、大公殿下ともあろう
 お方がそのようなおとぎ話を
 信じているとは思いませんでしたな。
バリンテン大公
「おや…、では、あなたたちは
 信じていない…?
「それは変ですね…。
 ライオネルの枢機卿が亡くなったのも
 聖石をめぐるトラブルと聞きますが?
神殿騎士ヴォルマルフ
「…さて、枢機卿は病死なさったと
 聞いておりますが…。
バリンテン大公
「では、あのベオルブ家の末弟を
 追っているのは何故ですか?
「わざわざ“異端者”にまで
 仕立てあげて追いかけ回す理由は
 何ですか?
神殿騎士ヴォルマルフ
「異端審問会の者どもの決めた事などに
 神殿騎士団は関知しておりませぬ。

バリンテン大公
「おやおや…、あくまでも
 知らないと申されるのですね…。
「しかし、これならどうですかな…?
「マラークを呼べッ!!

神殿騎士イズルード
「ち、父上、申し訳ございません。
神殿騎士ヴォルマルフ
「…く、そういうことか。

バリンテン大公
「『スコーピオ』と『タウロス』は
 我々が預かっています。

神殿騎士ヴォルマルフ
「この愚か者めッ!!

リオファネス軍騎士
「失礼いたします!
 例の者の侵入を確認致しました!

バリンテン大公
「マラーク、おまえに任せよう。

神殿騎士ヴォルマルフ
「望みはなんだ?

バリンテン大公
「はじめに申したとおりです。
 我々も力をお貸ししたいのですよ。
神殿騎士ヴォルマルフ
「…断ると言ったら?
バリンテン大公
「教会の不正を世間に暴くだけのこと。
神殿騎士ヴォルマルフ
「聖石だけでは何の証拠にもならぬ。
バリンテン大公
「たしかにそのとおりですね。
「だが、『ゲルモニーク聖典』なら
 どうでしょう?
「あれならば、ラーグ公も、
 ゴルターナ公も、元老院の方々も
 興味を示すでしょうね…。

神殿騎士ヴォルマルフ
「…どこにある?
バリンテン大公
「さて…。それを教えるわけには
 参りません。
神殿騎士ヴォルマルフ
「ウィーグラフ、今の魔道士を追え。
 ここは私が始末する…。

バリンテン大公
「おかしなマネはおやめなさい!
 あなたたちに勝ち目はありませんよ!

神殿騎士ヴォルマルフ
「勝ち目だと…?
「おまえたち脆弱な人間どもに
 何ができるというのだ…!

神殿騎士イズルード
「父上…?

神殿騎士ヴォルマルフ
「我々をなめるなよ、バリンテン…。
 貴様を殺すことなど容易いのだぞ…。

バリンテン大公
「刃向かう気かッ!?

神殿騎士ヴォルマルフ
「戦おうというのか…? いいだろう。
 貴様に聖石の力を見せてやる!