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 『雷神シドの息子』
 雨にぬれるグローグの丘で、占星術士オーランが再びラムザの前に姿を見せた。
 南天騎士団将軍・オルランドゥ伯の義理の息子にあたるオーランもまた、聖石を求める教皇の陰謀を知る者の一人であった。 オーランの言葉は、戦乱の流れを変えられず自分の無力さに苦悩するラムザを勇気づける。


剣士ラムザ
「…父さん、父さんなら
 どうしたんだろう……。

剣士ラムザ
「きみは……。

占星術士オーラン
「また会ったな。

剣士ラムザ
「黒獅子の紋章…
 きみは南天騎士団の人間だったのか。
占星術士オーラン
「きみが脱走兵を片付けてくれたのか。
「ベオルブ家の人間が
 我々に手を貸してくれるとは
 思わなかったよ。

剣士ラムザ
「…好きで彼らと戦ったわけじゃない。
占星術士オーラン
「わかっているさ。きみが望んで
 戦うはずがない。そうだろ?
「僕らも同じさ。
 好きで脱走兵を追っているわけじゃ
 ないんだ。わかるだろ?
剣士ラムザ
「きみは僕のことを
 知っていたんだな…。
占星術士オーラン
「ああ、手配書の中に
 きみの名前と似顔絵があったよ。
「しかも第一級の“異端者”だ。
 …いったい何をしでかしたんだい?

剣士ラムザ
「……僕を捕らえるのか?
占星術士オーラン
「どうして、そんなマネを
 しなけりゃいけないんだ?
「僕らの任務は脱走兵を捕らえることで
 肉親に追われているきみを
 捕らえることではない…。
「後ろの連中がきみの首を欲しいと
 言い出す前に、さっさと行くんだな。

剣士ラムザ
「…なぜ、
 きみたちは戦いを続けるんだ?
占星術士オーラン
「きみの兄さんたちが剣を僕らに
 突きつけている限り、戦いは続く…。
剣士ラムザ
「ラーグ公が剣を引けば
 ゴルターナ公も引くのか?
占星術士オーラン
「……いや、それはないだろう。
剣士ラムザ
「南天騎士団の将軍オルランドゥ伯に
 会う機会があるなら伝えてくれ。
「ラーグ公とゴルターナ公を煽り
 “利”を得ようとする奴らがいる。
「僕らは奴らの手の中で踊っているに
 すぎないってね。
 …倒すべき相手はそいつらだ。

占星術士オーラン
「なぜ、オルランドゥ伯なんだ?
剣士ラムザ
「父上が言っていた…。
 友と呼べる人は彼だけだったと。
占星術士オーラン
「オルランドゥ伯は僕の義父だ。
 伝えておこう…。
剣士ラムザ
「信じてくれるのか?
占星術士オーラン
「奴らがなぜ聖石を集めようと
 しているのかは知らない。
「それが民のために役立つことなら
 僕らは口出しするつもりはない。
「ただし、おのれの“利”のためだけに
 伝説を利用しようとしているのなら
 義父は黙っていないだろう。
「“雷神シド”の名にかけて
 誅伐することを約束するだろう。
剣士ラムザ
「きみたちは教皇の陰謀に
 気付いているのか!?
占星術士オーラン
「証拠をつかんでいるわけじゃない。
「僕らも内偵を進めているが、
 むしろ、きみの方が
 詳しいんじゃないのかい?
剣士ラムザ
「陰謀の証拠をつかめば
 戦いをやめてくれるのか?
占星術士オーラン
「証拠でもあるのか?
剣士ラムザ
「ここに『ゲルモニーク……
 …いや、なんでもない。
占星術士オーラン
「…戦いが終わるかどうかなんて
 誰にもわからない。
「だが、義父は必ず
 剣を引くに違いない…。

南天騎士団騎士
「オーラン様、参りましょう!
 

占星術士オーラン
「わかった、今、行く!

占星術士オーラン
「お別れだ、ラムザ。
 死ぬなよ。

占星術士オーラン
「ラムザ、
 きみは独りじゃない!
「きみには仲間がいる!
 命を賭して戦ってくれる仲間がいる!
「僕もその仲間の一人だッ!

剣士ラムザ
「…ありがとう、オーラン。