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 『利用する者される者』
 ライオネル城の一室に幽閉されたオヴェリアはディリータと再会する。ドラクロワ枢機卿と通じていたディリータをなじるオヴェリアの前に、枢機卿と騎士らしき男が現れた。
 抵抗を続けるオヴェリアに、ヴォルマルフと呼ばれた謎の騎士は驚くべき事実を告げる…。


騎士ディリータ
「食事に手を付けていないのか。
 食べないともたないぜ。
王女オヴェリア
「………。
騎士ディリータ
「おまえが死んで悲しむヤツなんて
 ひとりもいないぞ。
「それどころか、喜ぶヤツが大半だ。
 どうせ、死ねやしないんだ。
 無理せず食べろ。

王女オヴェリア
「…やはり、あなたも
 枢機卿と結託していたのね。
「私をどうしようというの?
 ラーグ公に引き渡さないのなら
 どうするつもりなの?
騎士ディリータ
「本来、おまえがいるべき場所に
 おまえを連れていく…、それだけだ。
王女オヴェリア
「あなたも私を利用しようというのね。
「…でも、私は
 あなたの言うとおりにはならない。
騎士ディリータ
「おまえに選択肢はない。
 生き延びるためにはそれしかないぞ。
王女オヴェリア
「それはどういう意味?
騎士ディリータ
「それは…。

騎士らしき男
「この娘がオヴェリアか…。

ドラクロワ枢機卿
「王女様、ご機嫌はいかがですかな?
「もう少しおとなしくして
 いただけるならば
 この部屋でなくともよいのですがね。

騎士らしき男
「フン、王女の身代わりの娘には
 十分すぎるぐらいだ。

ドラクロワ枢機卿
「ホホホホ…。ヴォルマルフ殿、
 この娘はまだ知らないのです。
ヴォルマルフと呼ばれた騎士
「そうか…。哀れな娘よ。
王女オヴェリア
「それは、どういうことなの…?

ヴォルマルフと呼ばれた騎士
「いいか、よく聞け。
「おまえはオヴェリアではない。

王女オヴェリア
「え…?
ヴォルマルフと呼ばれた騎士
「本物の王女はとうの昔に死んでいる。
 おまえはその身代わりなのだ。
王女オヴェリア
「そんな!
 ウソよッ!!

ヴォルマルフと呼ばれた騎士
「嘘ではない。
 おまえはオヴェリアではないのだ。
「ルーヴェリア王妃をよく思わぬ
 元老院のじじいどもが
 おまえを作り出した…。
「いつの日か、王位を継がせるために
 身代わりを用意したのだ。
 邪魔な王妃を追い出すためにな。
「やつらのやり口は実に周到だったよ。
 上の二人の王子を病死に見せかけて
 暗殺し、おまえを王家に入れた。
「病弱なオムドリアに新たな王子が
 できるとは思えなかったのでな、
 自動的に王位はおまえのものだ。
「ところがオリナスが誕生した。
 …いや、いまだに王子がオムドリアの
 子であるかどうかなどわからん。
「ラーグ公が実妹を王の母にするために
 外から“種”を
 用意したのかもしれん…。
「いずれにしても、
 元老院のじじいどもの計画は
 台無しになったのだ。
王女オヴェリア
「ウソよッ! 絶対にウソだわ!
 私には信じられない!
ヴォルマルフと呼ばれた騎士
「どう思おうとおまえの勝手だ。
「我々にとってもおまえが
 王女であるかどうかなど
 どうでもいいこと。
「我々は『王女』という強力なカードを
 手に入れた。
 それだけで十分だ。

王女オヴェリア
「…あなたたちは私をどうするつもり?
 いったい何をさせたいの?
ヴォルマルフと呼ばれた騎士
「何もしなくていい。今のまま
 『王女』でいてくれればよい。
王女オヴェリア
「私はアトカーシャ家の血を引く者!
 誰にも命令されたりはしないッ!
ヴォルマルフと呼ばれた騎士
「では、どうする? ラーグ公に
 捕らえられれば即、処刑だろう?
「我々は手助けをしたいだけだ。
 おまえが王位につくためのな…。

王女オヴェリア
「…あなたはいったい何者なの?
ヴォルマルフと呼ばれた騎士
「我々はラーグ公の味方でもなければ
 ゴルターナ公の陣営の者でもない。
「ただの“協力者”だ。

ドラクロワ枢機卿
「ヴォルマルフ殿、王女様にはもう少し
 頭を冷やしてもらいましょう。
「現実をきちんと認識すれば
 我々の“協力”を拒むことも
 ありますまい…。
ヴォルマルフと呼ばれた騎士
「うむ、そうだな…。

ヴォルマルフと呼ばれた騎士
「行くぞ、ディリータ!