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 『ひとつの石と小さな波紋』
 フォボハム平原に点在する風車小屋の中に北天騎士団の追跡を逃れたゴラグロスとウィーグラフがいた。ティータを誘拐したことを強く非難するウィーグラフ。そこへミルウーダの死の知らせが届いた。深い悲しみと憎しみに包まれたウィーグラフは仇を討つべく剣を握りしめた…。


騎士ウィーグラフ
「何故、娘を誘拐した?
騎士ゴラグロス
「我々が逃げるためには
 人質を取らざるをえなかったんだ。
騎士ウィーグラフ
「逃げるだけならば
 途中で解放することもできたはず。
「ゴラグロス、まさか、おまえまで…!
騎士ゴラグロス
「ギュスタヴと一緒にするのか!
「よく考えてみろ、ウィーグラフ。
 我々骸騎士団は仲間の大半を失い、
 今も北天騎士団に包囲されている。
「この窮地を乗り切るためには
 またとない切り札となるぞ。
 この娘はベオルブ家の令嬢だからな!

騎士ウィーグラフ
「逃げてどうする?
 いや、どこへ逃げようというのだ?
「この場から逃れようとも、
 われわれは奪われる側…。
 いいように利用されるだけだ!
「我々は我々の子供たちのために
 未来を築かねばならない。
 同じ苦しみを与えぬためにも!
「我々の投じた小石は
 小さな波紋しか起こせぬかもしれんが
 それは確実に大きな波となろう。
「たとえ、
 ここで朽ち果てようともな!

騎士ゴラグロス
「我々に“死ね”と命ずるのか?
騎士ウィーグラフ
「ただでは死なぬ。
 一人でも多くの貴族を道連れに!
騎士ゴラグロス
「バカな!
 犬死にするだけだ!!

騎士ウィーグラフ
「いや、ジークデン砦には
 生き残った仲間がまだいるはずだ。
「合流すれば
 一矢報いることはできよう!

騎士ゴラグロス
「すでに、殺られているかも……。

騎士ウィーグラフ
「なんだとッ!
 ミルウーダが殺られたというのか!
「ミルウーダ……。

骸旅団戦士
「ミルウーダの命を奪った小隊が
 ここへ来るのも時間の問題です。
「ウィーグラフ様、ご指示を!

騎士ウィーグラフ
「わかった。
 ここを撤退する!!
「聞いてのとおりだ、ゴラグロス。
 ジークデン砦へ向かうぞ。
 娘はここへ置いていけ!

骸旅団見張りの声
「敵襲ッ!!
 北天騎士団のヤツらだーッ!!

騎士ウィーグラフ
「チッ、早いなッ!!
「ここは私がくい止める!
 ゴラグロス、おまえは他の仲間と共に
 ジークデン砦を目指せ!!

騎士ゴラグロス
「オレは逃げてやる……。
 死んでたまるか!